院進-k(インシンク)|大学院進学について考えるためのポータルサイト

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ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社ー大学院卒のキャリアパスについて聞いてきました

和田 翔子(3年目社員)氏のプロフィール:東京大学大学院 農学生命科学研究科にて、「奄美大島における二ホンミツバチの花資源利用について」の研究に従事。2015年4月にユニリーバ・ジャパンのサプライチェーン カテゴリープランニング スキンケア&デオドラントサプライプランナーとして入社。

バスマジェ 詩織(人事)氏のプロフィール:ユニリーバ・ジャパン ヒューマンリソース HRスペシャリスト新卒採用。
上智大学法学部卒業後、2012年4月にユニリーバ・ジャパンにカスタマーディベロップメント(営業)職で入社。2016年4月より現職。通年採用プログラムであるUFLP365の戦略立案、選考が一部免除となるU-PASSの策定、ロンドンの世界大会に学生を送り込むUFLLビジネスコンテストの活性化、U-CAMPや高校生インターンシップを始めとするワークショップの作成など、既存の枠組みにとらわれない新しい施策を多数リードする。

インタビュアー:野村 嗣
博士後期課程単位取得満期退学。在学時に文部科学省高等教育局にて大学院生のキャリアに関する調査、提言を行う。2014年よりアカリクに入社、年間300名以上の大学院生にキャリアアドバイスを行う傍ら、大学などで各種講演を行っている。

前編では「UFLP365」について中心にお伺いいたしましたが、後編では大学院で生態学の研究をされていた和田さんに、現在の業務や大学院での研究や、なぜ研究職ではなくユニリーバ社でのサプライチェーン職を選んだのかなどを伺っていきます。

インタビューにお答えいただいた和田氏(左)とHRスペシャリスト新卒採用担当のバスマジェ氏(右)



現在はどのような業務を行われているのですか。

和田氏:現在はサプライチェーンという部署で、サプライプランニングを担当しています。基本的にはサプライという名称の通り、製品の供給を担当する部門です。海外に工場がある場合は、実質的に輸入業務、国内に工場がある場合は、工場の生産計画の立案、がコアな業務内容になります。
今3年目ですが、前者の輸入業務としては、イギリス、イタリア、タイ、中国、インドネシアの5カ国を担当した経験があります。国内工場は今まで3工場を担当しました。

それだけの工場数を既に経験されているのですね!

和田氏:当社では一年目から裁量権が大きく、「はい、この工場を担当してね」と自分だけの責任範囲を初めから持たせていただきました。でも確かに、改めて挙げてみると多く感じますね。(笑)
バスマジェ氏:和田もまだ3年目ですが、主戦力として働いてもらっています。当社は皆さんが思っているより、人が少ないんですよね。グローバルでは、とても大きな会社で、190カ国でビジネスを展開しているのですが、ユニリーバ・ジャパンは、500人も社員がいない中で、全国を担っています。和田のように、何カ国も工場を担当してもらうような大きな裁量を若いうちから持つことができ、活躍できる、というのは間違いなく言えると思います。

なるほど。ところで和田さんは、大学院で元々生物系の研究をされていたんですよね。

和田氏:はい、そうですね。農学系の大学院におりまして、そこで生態学の研究をしていました。具体的には奄美大島で二ホンミツバチを対象に、ミツバチがどういう花資源を利用しているのか花粉を通して観測する研究を行っていました。学部時代は大学院のときと研究対象が異なり、北海道の黒松内町でミズゴケが湿地の再生にどのように寄与しているか研究していました。
所属していた研究室の研究スタイルは、日本全国の生物多様性が豊かな地域に足を運んで、地域社会と協働しながら生物多様性の保全、健全な生態系の維持といったテーマに取り組むというものでした。北海道黒松内町は、生物多様性地域戦略を日本で最初に策定した自治体ですし、奄美大島は今世界自然遺産への登録を目指して、知見を蓄積しているところです。研究対象は一見まったく異なるように見えるのですが、生物多様性のサポートという意味では同じテーマを扱っていました。

そのような研究室ですと、博士課程に進学される方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。和田さんとしては博士進学は考えなかったのでしょうか。

和田氏:大学院に進学するときは、博士進学の可能性もあると考えていました。学部卒で就職する場合、大学三年生から就職活動が始まるので、研究室配属前の研究を全く知らない状態で進路を決めなければなりません。研究をやってみたい、少なくとも研究を経験した上で進路選択をしたいという思いがあったからこその院進学でした。結局、研究に取り組む中で、わたしの適性は少し違うかなと思い、企業就職の道を最終的に選んだという経緯があります。

能動的に自分の頭で考えて行動することの必要性について語る和田氏

一般的に理系の大学院生の方は企業の研究職を目指されることが多いのですが、和田さんはいかがでしたか。

和田氏:わたしは研究職以外を目指していました。農学系出身で研究職志望の方は、製薬、化粧品、食品などの業界で研究職に就かれるイメージがありますが、わたしの研究内容はコケやミツバチなど、生物学の中でもマクロな分野を対象としていたため、研究内容を生かせる研究職がイメージできなかったというのが率直な理由にはなります。
研究職に囚われず幅広く就職先を見ていましたので、自分の強みがどこにあるか少し引いて客観的にみて、自分の適性は何か考えるようにしていました。例えばミツバチがどういった花資源利用をしているかに関する大量のデータを統計的に解析して、何か法則性を見いだすという工程が研究の中にあったので、データ分析はできるかな、とか。大学在学中に国際交流もやっていたので、グローバルな方々と一緒に仕事をすることはできるかな、というように。

では、和田さんがユニリーバ・ジャパンを、選ばれたポイントはどこにあったのでしょうか。

和田氏:実は就職活動時にかなりユニリーバに惚れ込みまして(笑)。
就職活動時に私が軸に掲げていたのは、持続可能性とダイバーシティの二点でした。
わたしが元々生物多様性保全を扱う研究室に入った理由は、持続可能性というテーマに興味があり、持続可能性を担保している自然環境側の原理を知りたいと考えたからでした。そのとき当社のビジネスモデルである、「環境負荷を削減し、社会に対するよい影響を増加させながらビジネスを成長させる」という考え方に出会い、感動しました。そんな戦略を掲げている企業が世の中に存在していたんだ、と驚いたことをよく覚えています。
二点目ですが、幼少期に海外に住んでいた経験や大学時代に国際交流に熱心だった経験がありまして、グローバルで多様な人材がいる環境で働きたいという思いがありました。当社はグローバル企業ですので、業務を通じて海外の方とやり取りをすることも多いですし、実際にユニリーバ・ジャパンの同僚に外国籍の方もおります。この二点から、「これだ!」と思いました。

その中でサプライチェーンという部署を自分で選ばれたのですか。

和田氏:はい。就職活動中に、枠に囚われずに色んな可能性を探ろうと考えていた一環で、研究室の先輩が、社会人向けに開催していた講演会に参加しました。そのときのテーマが、「サプライチェーンにおける環境リスクマネジメント」だったんですね。端的に言いますと原料を持ってきて、それを加工して、それを最後消費者に届けるという工程全体に企業の社会的責任が問われていますよ、と日本企業に警鐘を鳴らす講演会でした。実際に環境NGOがある製品について、熱帯雨林を破壊して栽培された原料をもとに作られていると批判するキャンペーンを展開し、大規模な不買運動に発展した事例も紹介されていました。
サプライチェーンの環境リスクマネジメントを怠ると、消費行動に直接繋がりうるビジネス上のリスクがあり、またその取り組みがまだまだ発展途上だという話を聴いて、「サプライチェーンマネジメントは開拓する価値とその余地がある分野だ」と思いました。

現在、5カ国3工場とまわってみていかがですか。

和田氏: サプライプランナーとして工場や原料資材サプライヤーと取り組んでいるのは、供給の過程でなるべくゴミを出さないようにすることです。特に腕を試されるのが、製品のリニューアルのタイミングです。既存の製品の在庫を減らし、市場から在庫をなくしてから新製品を出しますので、既存の製品の減らし方を間違えると、余った場合はゴミに、足りない場合は欠品になってしまいます。このコントロールをいかに上手くやるかがわたしに課されていることです。
生物多様性保全に直接関係はしないですが、サプライチェーンの環境負荷削減という当初の目標に対しては、貢献できていると思います。

大学院生のときのミツバチの大量のデータを統計分析して論文にするという研究が、役に立っているんですね。

和田氏:そうですね。まず大量のデータを見ても拒否反応が出ないという点で役に立っています。
もう少し踏み込むと、ビジネスで物事を前に進めようと思ったとき、数字で示して決断を促すのが有効だと感じています。例えば、何かの決断を下すときに予めオプションA、B、Cの提示があり、それぞれにかかるコストとメリット・デメリットが数字で示されていたら決めやすいですよね。何か問題意識を持ってビジネスをある方向に持っていきたいと思ったときに、どのデータを元に、どうまとめれば有効な働きかけができるか考えながら会社を動かしていくのは楽しい過程です。これをやるためのバックグラウンドとしてデータを扱うという能力は活きていると思います。

他にも、研究室に所属して良かったな、今実際に活きているなって思う点はありますか。

和田氏:2点思いつきます。1点目は研究テーマを1つ自分で持って、研究結果というアウトプットに対して責任を持って取り組むというプロセスを経験できたことそのものです。このプロセスは学部までの受動的な学びのプロセスとは全く違うと思うんですね。授業やテストを受けて、ある程度以上の点数が取れたら単位が取れます、ではない。「アウトプットを出す」ために能動的に自分の頭で考えて行動する必要があります。問題があれば相談して解決したり、今までとやり方を変えて解決したり、というプロセスを体験したことは、仕事にも通じる基礎的な力になっていると思います。
もう1点は、わたしが先生から学んだことです。わたしの所属していた研究室は、研究者だけでなく、自治体や、市民の方など、様々なグループの方と協働する研究スタイルを取っていました。研究にとどまらず、生物多様性保全を通して地域の活性化をするという、より大きなムーブメントを起こしていくことを目標としていたんですね。でも様々なグループがいるということは、価値観や利益が必ずしも同じでない方々がいらっしゃるということです。そんな中、それぞれの立場に配慮したコミュニケーションを考え、価値観の相違を超えてwin-winの関係を構築して連携体制を作っていくことが上手な先生で、とても勉強になりました。
より大きい変革を起こしていく姿勢と、そのための実践を現場で直接学べました。このような体験はビジネスの場で起きていることに通じる面も多く、今の仕事をするにあたって活きていると思います。

実際どのようなときに活きているな、と感じられましたか。

和田氏:例えば、1つの工場と、取引制度を根本的に見直し、大きくモノと情報とお金の動きを変えましょう、という取り組みをしたんですね。新しい取引制度を提案するにあたり、当社のメリットが何かだけでなく取引相手にとっても何がメリットかをきちんと考えましたし、お互いにとってメリットがありますよね、ということをよく話して進めることができました。変革を起こすためにwin-winの関係を構築する、これはまさに研究室の経験が活かせた事例だと思っています。
本プロジェクトは、社会人1年目の最後から2年目の夏までかかったのですが、プロジェクトリーダーを任されていました。取引制度の変更ですので、新しい制度に沿ってモノと情報とお金の流れを全て整合性を持たせて再構築する必要がありました。しかし当時はまだ何も分からない1年目です。会社のITシステムを改修する、協力工場との契約を変える、社内の運用と取引相手内部の運用を変える、原料資材を供給しているサプライヤーにも案内を出さないといけない。法律の知識、経理の知識、ITの知識、社内と取引先の実オペレーションに関する理解、全てが欠けてしました。それを関係部署に一個一個聞いて理解しながら、且つ全体の進捗を目をくばりながら進めるというのが、恐ろしく大変でした。
でも乗り越えてみると、たくさんの人と関わりながら、1つのことを成し遂げられたというのはやはり楽しい経験でした。おかげで、取引に関わることを表から裏まで全部知れたというのも、結果的にわたしの強みになったなという実感を持ちながら現在仕事をしています。
やはり若手のうちは経験が少ない分、難しい仕事をこなして成長してなんぼだと思っています。これからもチャレンジしていきたいです。

活躍されている中で大学院に行かずに就職したら良かった、と思われたことはありますか。

和田氏:基本的には悔いはないです。やはり自分の中のテーマであるサステナビリティ(持続可能性)について考えを深めたかったので、わたしにとっては有意義な時間でした。強いて言えば、3年目といっても、同期よりは年齢的に2つ年上ですので、その分何か力を発揮しないといけないかなって、思う瞬間はあります。とはいえ、人生長いので2年くらいは大した差ではないと思います。

大学院に行くべきなのか行かないべきなのか、と悩んでいる方も多くいらっしゃると思います。そういった方にもしアドバイスするとしたらどのようなアドバイスをされますか。

和田氏:どういう道に進むにしても、仮説を持って飛び込んだ方がいいかなとは思います。自分が何をやりたいか分からないから、とりあえず院に行こう、という考え方ですと、結局院の2年間があっても本当にやりたいことは見つけにくいと思うんですね。例えば、「自分がこういうことに興味があるから、こういう研究をしてみたい、適性あるかも」程度の仮説でいいので、それを持って飛び込んだ方がいいかなと思います。
結局やってみないと本当に向いているのか分からないので、仮説を持って飛び込み、仮説検証を繰り返して自分の求めるものに近づいていくのが効率的だと思います。
まず就職して試してみるのもありだと思います。例えば当社は職種別採用を行なっていますが、やってみた上で途中で職種を変えるという選択肢もあります。自分がやりたいことに最終的に一番近づけるように、仮説を持って能動的に飛び込みましょうというのがアドバイスですね。

改めて、和田さんにとってユニリーバ・ジャパンで良かったなって思うときはどのようなときでしょうか。

和田氏:当社は全体としては大きなグローバル企業でありながら、ユニリーバ・ジャパン自体は小さいという二面性があります。そのため風通しが良く、何かを変えようと思ったときに、社長に直談判できたり、声を挙げる機会を持ちやすかったりします。わたしのような3年目が、声を挙げて、「こうしたらもっと良いと思います」というのを「いいね、いいね、やろう」って言っていただけて、それを実現するサポートをもらいやすい体制があり、仕事のやりがいになっていて楽しいです。

和田さんご自身はこの先どのようなテーマを持っておられますか。

和田氏:わたしは一環して持続可能性がテーマです。現在それに対してアクションを始めています。例えば、他部署の人と一緒に、日本社会に対して、ユニリーバ・ジャパンとして持続可能性というテーマで、どういった貢献ができるのかを考える、有志の会を立ち上げて取り組みを始めています。他にも、自分のサプライチェーンにかかる業務の中で、よりこういう風に改善したら、持続可能性に近づけるのではないか、という提案は積極的に出しています。こういった取り組みを、まず今できる範囲内でやりアクションを起こしていく。さらに今後なるべくそのような取り組みの幅を広げていけるように、色んなキャリアを経験していくことを目指しています。

終始仲睦まじく、率直に話をされる和田氏(左)とバスマジェ氏(右)

有志の会を立ち上げられたりと、精力的に動かれておりますが、本日のようなノー残業デー(ユニリーバ・ジャパンには、毎週水曜日は18時30分に退社するノー残業デー制度があります。)でのメリハリはどのようにつけておられるのでしょうか。

和田氏:入社以来試行錯誤を繰り返して、より効率的に働けるよう意識しています。学生のときと大きく違うのは、労働は会社にとってコストである、というところですね。単位時間当たりのアウトプットを高める意識が芽生えました。
また大学院の研究は、1つのテーマを深掘りするので時間はたっぷりあるように思っていましたが、今は製品の供給を担保し続けながら並行してプロジェクトを動かすというマルチタスクに変わり、時間が有限であるということに直面しています。長時間働き続けるのは体が持たないですし、結局疲れていると仕事の効率が落ちてしまうので、効率を高めるためにもメリハリは重要です。
ほかにも研究とビジネスでの意識の違いはあります。研究は一つ一つ立証可能なものを積み上げていって、きれいな理想条件のもと、結果を出していきます。その一方でビジネスは、もう少し荒削りでいいので、とりあえず前に前に進めていく、100%確実なものを出すよりも素早く前に進めていくこと重要です。
このような研究とビジネスの違いに直面して、現実にぶち当たりながら意識を変えて効率化をしてきて今がある、という感じですね。

それでは最後に、お2人から、一言ずつメッセージをいただけませんしょうか。

和田氏:当社では、社員一人一人が待つパッションを大事にしています。大学生活はそのような自分のパッションと向き合う大事な期間だと思うんですね。大学院にいると同世代と比べて葛藤があったりするかもしれないですが、自分の大事な人生の1ページなので、本当に知的好奇心に任せて、それに対して本気になっていいと思います。それが気づかないところで人生の糧になるし、自分の能力になっていくと思うので、気にせず邁進していただきたいです。
バスマジェ氏:とにかく自分らしくいてほしいなと思っています。自分の人生は人と比べるものではないし、自分は何がしたくて、どういう人生を生きたいのかと、いつでも考えてほしいと願っているんですね。自分の好きなことは何なんだろう、逆に自分が怒りを感じる時ってどういうときなんだろう、自分の感情に素直に向き合っていただいて、自分を深める時間にしていただけたらなと思っています。勉強もすごく大事なことで、絶対何かの役に立ちますので、頑張っていただきながら、社会に出ることの意味を考えていただけたらいいかなと思っています。応援しています。

ありがとうございました。


アカリクでは大学院進学を考える上での一助となるような活動を積極的に行っております。

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「院進-k」事務局
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